経済的な理由で国民年金の保険料の支払いが難しい時は、『猶予』などの手続きを取ることができます。

支払いの『猶予』は、簡単に言ってしまうと、国民年金保険料の支払いの先延ばしです。

国民年金保険料の支払いが難しいとき、支払えないものは支払えないので、『猶予』手続きもやむなしです。

ただ、猶予期間分の保険料を納めないままにしておくと老後の年金受給額は減ってしまうので、『追納』による穴埋めを検討した方が良いでしょう。

『追納』のメリットや注意点は、以下の通りです。

国民年金保険料の『追納』で年金の受給減回避&節税効果

とある女性(28)は大学生のころ、国民年金の『学生納付特例制度』を申請し、保険料の納付を猶予されていました。

彼女は、猶予された期間は将来の年金額に反映されないと聞いたことを思い出し、「今からでも払った方がいいのか?」そんな疑問をもちました。

この場合のアドバイスはこうです。

「1年分を追納すれば、将来の年金額が年約2万円増える計算です。それに節税効果もあります。二つのメリットを考えると、経済的な余裕があるなら、納めた方がいい」

追納の負担と受給額

国民年金制度には、20歳以上60歳未満の人が全員加入します。

加入期間は40年。

保険料の支払いを『猶予』されると、期間1年につき、老後に受け取る年金は“満額の40分の1”減額されてしまう。

物価水準などにより変動する“満額”は、2018年度は77万9300円。

その“40分の1”は、約1万9480円。これが、1年分の『追納』で増える年金額の目安になります。

保険料を1年分追納するのに必要なお金は、どの年度分を追納するかによって異なりますが、おおむね18万~20万円程度。

『追納』の保険料負担と、『追納』によって増える毎年の年金額をてんびんにかけると、65歳の受給開始から10年超で後者が上回る計算になります。

国民年金は終身年金で、生きている限り支給されます。人生100年時代と言われる今、このメリットを享受できる人は多いはずです。

さらに、税制面でもメリットがあります。

税制面のメリットとは?

国民年金の保険料は納めた全額が『社会保険料控除』として、所得税や住民税を計算する際の所得から差し引かれます。

年末調整や確定申告で手続きをすれば、追納した年に納める所得税などの額を圧縮することができます。

たとえば、年間の課税対象所得が300万円の場合、所得税の税率は10%で、一律10%の住民税もかかります。

保険料20万円を追納したケースで考えると、所得から20万円が差し引かれるから、税額は計4万円下がる計算になります。

所得税率は所得の水準によって変わるため、節税効果もそれに応じて変動します。

将来の年金額の増加と、節税効果をあわせて考えると、10年より短い期間で追納した保険料を『回収』できるとみることも可能です。

ただ、『追納』の場合、直近2年度分を除き、保険料に加算額が発生し割高になるので注意してください。

たとえば、10年度に猶予された保険料を18年度中に納める場合、当時より月420円加算され、1年分で5040円高くなっています。

10年前までなら、さかのぼれる!

『追納』をするには、年金事務所での手続きが必要なります。

『猶予』された期間が、複数の年度にわたっている場合、より古い期間から納めることになる点も押さえておいてください。

注意が必要なのは、追納できるのは“10年前の保険料まで”となっている点。

たとえば、2021年9月中なら、2011年9月分までさかのぼって納められます。

20歳の時に『猶予』された分は、30歳ごろまでに『追納』する必要があるということ。

仕事で忙しいと、つい忘れてしまうので、注意してください。

『猶予』などの手続きを取らないまま毎月の保険料を納めていない場合は、『未納』扱いとなり、直近の2年分しかさかのぼって納めることができないことも要注意です。

後で納められる余裕ができても、将来の年金額を増やすことができない事態を招くことになってしまいます。