青色申告の承認を受けて賢く節税する方法

確定申告には、青色申告と白色申告があります。

まず、白色申告にはメリットが、特にありません。なので、白色申告を選択する特別な理由もありません。

つまり、税務上圧倒的に有利な青色申告の承認を受けることが、マストです。

青色申告の承認を受ける主なメリット

青色申告の承認を受けることによって得られる主なメリットは、

  • 欠損金の繰越控除・・・法人が赤字を出した場合に、その赤字金額を翌期以降9年にわたって黒字から控除できる仕組み(平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年) 。
  • 特別償却・割増償却・・・ある一定の資産を購入した場合に、より多くの減価償却費を計上できる。
  • 税額控除・・・固定資産や人件費etc.について、一定の支出があった場合に、税額を直接控除できる。

※特別償却・割増償却、税額控除は、制度の変更が頻繁におこなわれるので、注意が必要です。

役員への給与支払いで賢く節税する方法

役員報酬の支払いは(法人税の)節税効果がありますが、損金(経費)にするためには、以下について注意が必要です。

役員報酬による節税の注意点

役員報酬は、「定期同額給与=毎月一定の時期に同額が支払われる給与」である場合に限って、税務上の経費(損金)にすることができます。

また、役員報酬の改定は、事業年度開始から3か月以内に限り可能です。

役員賞与は定期同額ではないので、原則損金にはなりませんが、例外的に、税務署へ事前届け出をすれば、損金にできます。

役員報酬は損金になるので、法人税の節税には効果があります。

ただ、その一方で、役員報酬を受け取った個人には、給与所得として所得税etc.がかかることになります。

よって、法人として納税した方が良いのか、個人として納税した方が良いのか、それぞれの税率や経営状況などを考慮する必要があります。

役員として家族が事業に従事している場合には、社長ひとりにまとまった役員報酬を支給するよりも、家族に分散させて支給する方が、各々の税率を下げることができるので、全体での節税効果を期待することができます。

出張規程をしっかり定めて賢く節税する方法

出張に関する主な支出には、交通費や宿泊費がありますが、出張旅費規程に日当etc.を定めていれば、実費だけではなく、日当etc.も法人の損金にできます。

出張規定の注意点

日当を受け取る個人から見ると、日当は給与ではなく、非課税所得となります。

給与ではないので、社会保険料の負担も増えません。

さらに、国内出張に関する手当は、消費税の課税取引なので、仕入税額控除の対象になり、消費税の節税にもつながります。

つまり、法人にも個人にも節税効果を期待できるというわけです。

ただし、注意も必要です。

日当の主たる目的は、節税ではありません。

ということで、日当etc.などの金額は、同規模・同業他社と比較して、同水準であることが望ましいです。

社長・役員・一般の社員etc.の役職に応じて、金額に差をつけることができますが、出張旅費規程の対象は全社員。

また、書類の保管も必要です。

出張旅費規程を定めることで、節税だけではなく、事務処理の効率化も図ることができます。

自家用車の譲渡契約を結んで賢く節税する方法

車の名義を個人から法人に変えると、ガソリン代などの費用(実費)だけではなく、減価償却費etc.も法人の経費にできます。

そこで、個人で所有している車について、法人と譲渡契約を締結します(法人に車を買い取ってもらう)。

マイカー譲渡契約の注意点

法人との売買では、市場価格で取引すること。

市場価格より高い金額で売買した場合、役員報酬や給与と見なされる可能性があるので、要注意です。

役員報酬と見なされると、法人の損金(経費)にならない。さらに、個人の給与所得として課税される。

つまり、会社(法人)・個人両者の負担となるのです。

車を法人へ売却したときの売却益は、生活用財産の譲渡のため、個人への課税はありません。

法人へ名義変更後は、私用分については、損金になりません。

譲渡契約によって名義変更せず、個人から法人に車を賃貸借契約で貸し出すこともできます。

しかし、この場合、個人が会社から受け取るお金は個人の所得になるので、課税対象となります。

自宅を法人登記して賢く節税する方法

法人登記を自宅にしている(もしくは、自宅にする)場合、自宅にかかる支出のうち、法人が利用している部分に対応する金額を、法人の経費(損金)にすることができます。

自宅を法人登記する場合の注意点

ただし、自宅が賃貸物件なのか、もしくは、自己所有物件なのかによって、取り扱い方が異なります。

  • 賃貸借物件・・・法人で利用している部分の(部屋の)床面積を計算し、それが全体においてどの程度の割合であるかを算出する。法人が利用している割合の分だけ、法人の損金にする。
  • 自己所有物件・・・法人・個人間で賃貸借契約を結ぶ。近隣の相場を参考に賃料を決める。法人が個人に支払う賃料は、法人の損金になるが、個人に入るお金(法人から支払われる賃料)は、不動産所得として課税の対象になる。

飲食代を正しく経費計上して賢く節税する方法

飲食代を経費計上する場合、次の3パターンに分けることができます。

飲食代を3パターンにわけて経費計上する

  • 会議費・・・取引先との打ち合わせや会議などのために用意した弁当や飲料、茶菓子。また、カフェやファミレスなどでおこなわれた打ち合わせの飲食代。その他にも、取引先を接待した場合の飲食代(一人当たり5000円以内)。
  • 交際費・・・取引先を接待した場合にかかった飲食代。ただし、交際費全額を損金(経費)に必ずできるわけではなく、税務上の上限が設けられているので、要注意。
  • 福利厚生費・・・社員と、新年会や忘年会などで飲食する場合。福利厚生費計上の大前提は、全社員が対象で、もっぱら従業員の慰安のためであること。一部の人たちや希望者のみ参加するなどのケースや、あまりにも豪華すぎるケースなどは、給与認定されることもあるので、要注意。

領収書・レシートの保管は必須と考えてください。また、参加者や飲食の目的などをメモしておくことも調査対策として必要です。

技能取得費を経費計上して賢く節税する方法

現状の会社経営および将来の会社経営に必要か、という視点で判断し、売上や利益に貢献するための知識を得る、経験をすることに必要な費用であれば、損金として計上することができます。

技能取得費を経費計上する5つのポイント

ただし、技能取得費の解釈は明確に定まっているわけではありません。

そのため、損金とならずに、個人に対する給与と認定されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

そこで、事業にどのような資格etc.が有益なのか、また、いくらまで会社負担にするのかといったことを規程によって明確にすると良いです。

自分なりの幅広い解釈をせず、狭義の解釈にとどめることで、給与認定を避けることが可能です。

そのためのポイントは、次の5つ。

  1. 事業と無関係なものを経費計上しない
  2. 個人的な趣味であるものを経費計上しない
  3. 勉強のため(勉強が目的)のものを経費計上しない
  4. 職務に直結する技術・知識、免許や資格を得るための費用に限って計上する
  5. (客観的に見て)適正な金額の費用に限って計上する

役員報酬の支払いを活用して賢く節税する方法

法人の節税策として大きな効果を期待することができるのが、役員報酬です。

その役員報酬を節税として上手に活用するには、ルール上、大きな注意点があります。

役員報酬の支給で節税効果を得るために必要なこととは?

法人の節税策として大きな効果を期待することができるのが、役員報酬です。

その役員報酬を節税として上手に活用するには、ルール上、大きな注意点があります。

それは、役員報酬を損金(経費)にするためには「定期同額給与」でなければならないということです。

役員報酬は、定期同額給与に限って、損金にすることができます。

では、定期同額給与とは何かというと、、、その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもののこと。

カンタンに言うと、毎月同じ時期(一定の時期)に、同額で支払われる給与のことです。

そして、役員報酬の金額を変更するのは、事業年度開始から3か月以内に限って可能です。

つまり、上記の期間内に決定した役員報酬の額を、毎月同じ時期に支給する。

これが、定期同額給与ということです。

ということは、決算が近づいてきて利益が出ることが判明したから役員報酬を引き上げた場合では、その増額分が損金にならないということになります。

逆に、事業年度の最中に、資金不足におちいりそうだからといって役員報酬を減額した場合、その減額分は損金になりません。

ここで気になるのは、役員賞与の取り扱いです。

役員賞与は定期同額給与ではないので、原則は損金になりません。

ただ、絶対に損金にならないのではなく、あくまでも「原則は」です。

つまり、例外があるのです。

その例外とは「事前確定届出給与」という制度です。

事前確定届出給与は、前もって支給する時期・支給する金額を定めた届出書を、所轄税務署へ提出することを前提に、定期同額でなくても、損金として認められる制度です。

届出書の提出時期ですが、期限がもうけられています。
(以下、国税庁ホームページより引用)

1. 株主総会等の決議により役員の職務につき「所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは同法第54条の2第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定め」(以下「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」といいます。)」をした場合(以下の2又は3に該当する場合を除きます。)
  株主総会等の決議をした日(同日がその職務の執行を開始する日後である場合にあっては、当該開始する日)から1月を経過する日。ただし、その日が職務執行期間開始の日の属する会計期間開始の日から4月(法人税法第75条の2第1項各号(確定申告書の提出期限の延長の特例)の指定を受けている内国法人にあっては、その指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日(以下「会計期間4月経過日等」といいます。)後である場合には当該会計期間4月経過日等

2. 新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」をした場合
   その設立の日以後2月を経過する日

3. 臨時改定事由(法人税法施行令第69条第1項第1号ロ(定期同額給与の範囲等)に規定する役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情をいいます。以下同じ。)により当該臨時改定事由に係る役員の職務につき「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」をした場合
  次に掲げる日のうちいずれか遅い日

  イ 上記1に掲げる日(上記2に該当する場合は、2に掲げる日)
  ロ 当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日
   (注)役員の当該臨時改定事由が生ずる直前の職務につき「定め」があった場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を使用してください。

詳しくは顧問税理士に確認してもらうとして、通常、気をつけておくことは、次のうちの早い日が提出期限であるということ。

  • 株主総会等の決議によって、支給時期と支給金額を定めた場合は、その株主総会等による決議をした日から1か月を経過する日
  • その事業年度の開始の日から4か月を経過する日

※非常勤役員がいる場合は上記のケースとは異なります。

役員報酬による節税における基本的な考え方は、役員報酬を増やして、会社の利益を減らす(および法人税の支払いを減らす)ということ。

この考え方をベースにした場合、法人税にフォーカスすれば、たしかに大きな節税効果を期待できます。

でも、個人の所得税や住民税、健康保険(や社会保険)のことを考えると、果たして本当に節税できているのかは、疑問です。

会社に納税負担が重くのしかかるか。

それとも、個人にドンッとのしかかるか。

シミュレーションは必須です。

顧問税理士との契約が法人とだけ、という場合に税理士が協力してくれるかは分かりませんが、シミュレーションをしっかりやっておかないと、重い負担を背負わされていた・・・なんてことになりかねません。

旅費の経費を漏れなく正しく計上して賢く節税する方法

出張旅費だけではなく、事業に関係している旅費であれば、損金(経費)になります。

国内・国外問わず、社員旅行や研修・視察旅行でも、(念のため、繰り返しますが)事業関連のものであれば、損金です。

社員旅行を経費にする場合の注意点

ただ、税務否認され、損金として認められなければ、その認められなかった分(全額か一部かは事情により異なる)については、給与として課税されることになるので、注意が必要です。

家族経営の会社の社員旅行なんて、要注意です。

社員旅行が損金として認められるには、会社(法人)が役員や社員に供与する経済的利益の額が少額であること(少額か否かの明確な定めはない)のほかに、

  • 国内旅行は4泊5日以内であること
  • 海外旅行は外国滞在期間が4泊5日以内であること
  • 参加者の人数が全体の50%以上であること
  • 不参加の者に金銭の支給をしないこと

、、、の要件をすべて満たす必要があります。

仮に、社員旅行に(社員ではない)家族を同伴して参加する場合には、家族の参加にともなう費用は、全額参加者本人の負担です。

 

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