経費にならない決算賞与の支給がダメな節税策になる理由

「思っていたよりも利益が出てしまう・・・」という事態に直面して、決算賞与の支給を検討する会社があります(税理士のアドバイスによるわけですが・・・)。

決算賞与の支給を税理士に薦められたら、、、

決算賞与は、一定の要件を満たすことで、たとえ(当期)未払いであっても、当期の経費として計上することができます。

「経費を増やすことによって、利益を圧縮して、節税する・・・」

決算賞与の支給は、使い勝手の良い手法と言えるかもしれません。

ただ、使い勝手が良い手法である一方で、決算賞与を経費計上するための要件を満たしていないために、税務調査で否認されてしまうこともあります。

よって、「要件を満たしているか否か」顧問税理士への確認は、必須です。

決算賞与を経費にするためのポイント

決算賞与を経費計上するための要件

  • 事業年度終了までに支給額を全従業員に通知すること
  • 通知した金額を事業年度終了日の翌日から1か月以内に全額支給すること
  • 通知した金額を当期の経費として処理すること

決算賞与を経費として計上するときのポイントは、「支給対象者全員に通知」をし、なおかつ「支給金額を翌月中に支払わなければならない」ということです。

仮に、翌月の末日が「土日祝日」にあたる場合、支給日が翌々月になってしまう・・・そんな事態が考えられます。

この場合、「翌月中に全額支給すること」の要件を満たさなくなるので、経費計上はできません。

なので、要注意です。

節税策『決算賞与の支給』がダメな理由

では、要件を満たせば、節税策として決算賞与の支給が良い方法かと言うと、そうとも言い切れません。

もう一つ絶対に検討しなければならないことがあります。

それは、決算賞与を支給した場合と支給しなかった場合、どちらのケースの方が「手元資金を多く残すことができるか」ということです。

決算賞与を支払わなかった方が手元にお金が多く残る。

逆に、節税目的で決算賞与を支払うことで、納める税金の金額は少なくなったけど、より多くのお金を失った・・・ということが起こりえます。

そもそも、節税は資金の流出を可能な範囲で防ぐためにおこなう対策のはず。

なのに、節税することによって、より多くのお金を失うのでは本末転倒ですよね。

だからこそ、要検討(シミュレーションをすることが必要)なのです。

役員への決算賞与

役員に対する決算賞与については、損金不算入です(経費にならないということ)。

ただし、使用人兼務役員の使用人分(使用人分に該当する部分)については、役員分ではなく従業員分とみなされるので、決算賞与を経費として計上することができます。

では、誰が使用人兼務役員になるのか?

ひとりビジネスの社長や社員数名の家族経営といったケースでは、使用人兼務役員になる人は、ほぼいないでしょう。

ということは、節税策になり得ないということです。

※使用人兼務役員については、国税庁のホームページに「使用人兼務役員になれない人」が列挙されていますので、ご自身で確認してみてください。もしくは、顧問税理士にお尋ねください。

納税の調整手段としての決算賞与

翌期の賞与(決算賞与支給後の通常の賞与)で、支給額を調整することを念頭に、決算賞与を支給することを考える経営者がいます。

こういった経営者は、翌期の賞与の金額を抑えて、年間の賞与支給額を(一年間のトータルで見たときに)例年と変わらないように調整しようとしているのです。

決算賞与の支給は、役員・従業員のモチベーションが上がると言われています。

なので、一見悪くない手法、むしろ良いことのように思えます。

でも、あなたが賞与を受け取る側の立場だったら、金額が調整されて支給される賞与(結局、多くもらえるわけではない!)で、仕事のモチベーションが上がるでしょうか?

「頑張ったところで変わらない・・・」
「業績が良くても変わらない・・・」

これではモチベーションなんて上がりませんよね。

結論

賞与を税金の調整手段(節税)として使うことは、お薦めできる手法ではありません。

低価法適用のためにおこなう決算セールがダメな節税策になる理由

「決算セール=在庫処分」というイメージをもっていませんか?

決算セールって、やる意味あるの?

「決算セール」「在庫処分」と書かれたチラシや店頭ののぼりをよく目にするので、このイメージが強いのは当然です。

でも、決算セールは、単なる「在庫処分」ということだけのものではありません。

値引き販売の事実をつくる節税策

実は、決算セールは、在庫を安い価格で販売し、「その金額で販売をした」という事実をつくることで実現できる節税策でもあるのです。

これは、決算時に「原価割れ販売」をすることによって、棚卸資産の評価「損」を計上する手法です。

決算セールによる節税のポイント

決算セールによる節税のポイントは、在庫の評価方法にあります。

在庫の評価方法は「原価法」と「低価法」の2つです。

  • 原価法は、購入(仕入れ)価格を在庫の金額とする方法。
  • 低価法は、時価が原価よりも下落している場合に、期末時点での時価を在庫の金額とする方法。

低価法は、時価を在庫金額とするので、時価が下がっていれば、含み損を当期の経費として計上できる、、、これがメリットになります。

ここでの時価とは(法人税基本通達5-2-11により)正味売却価額のこと。

よって、決算セールにおいて値引き販売をしたのであれば、その販売価格が「正味売却価額=事業年度終了時の通常付される価額(法人税基本通達5-2-11)」となります。

決算セールによる節税策の問題点

問題は、取得価額(購入価格、仕入れ価格)よりも低い価格で販売しなければ、低価法の恩恵を受けることができない・・・つまり、原価割れでの販売が必要だということです。

不良在庫の処分を目的としているのであれば、決算セールも悪くない手法ですが、低価法の恩恵を受けることが目的なら、決して良いと言える手法ではありません。

節税目的で原価割れ販売をする行為、、、これは「原価割れ=赤字」なわけです。

売上を増やそう、利益を増やそうとビジネスしているはずなのに、自ら赤字になるようにビジネスをしていくというのは、本末転倒ですよね。

しかも、原価割れ販売は、本末転倒な行為であるだけではなく、税務否認される可能性を含んでいます。

低価法適用のための注意点

棚卸資産(在庫)の評価方法は、届け出をしなければ、低価法ではなく、原価法が適用されます。

  • 原価法は、購入(仕入れ)価格を在庫の金額とする方法。

なので、わざわざ原価割れ販売を実施しても、届け出を忘れてしまったら、何の意味もありません。

低価法適用には、その事業年度開始日の前日までに棚卸資産の評価方法変更の届け出の提出が必要です(つまり、通常一年以上前からの準備が必要ということ。無計画な経営ではダメなのです)。

ただし、設立1年目の場合は、1年目の確定申告書(決算書)の提出期限までに届け出を提出すること。

また、現行の方法を採用してから相当期間を経過していない場合には、申請が却下される可能性があるので、注意が必要です。

税務否認のリスクを回避するなら、、、

ビジネスにおいて、原価割れでの販売は、本来あってはならないことです。

評価損を受けるためだけに、一部の在庫だけを原価割れで販売した場合は、悪質と判断され、税務否認の可能性が高くなります。

このようなリスクを回避するのであれば、原価割れでの販売ではなく、在庫の廃棄処分の検討も必要です。

節税目的の決算セールは、愚策!

実は、決算セールは、決算賞与と同様に(利益の調整目的・調整手段として)お薦めの節税策と言われています。

たしかに、目先の納税額(今、納める税金)だけを考えた場合には、悪くない手法なのかもしれません。

しかし、将来を考えたときには、愚かな策略となってしまう可能性が非常に高いです。

たとえば、価格を下げることがわかっていれば、安くなった時にしか買わないという人が増えちゃうとか・・・つまり、安易にやったことが、結果として、自分の手で自社の価値を下げることにつながってしまうわけです。

費用の先取りをする翌期経費の前倒しが節税策としてダメな理由

翌期経費の前倒しって、本当に効果があるの?

翌期の始めに予定している費用を先取りし、当期の経費として計上することで、当期の税金(納税)を少なくする、、、これは理にかなっている方法です。

でも、本当に経費計上の時期を早める必要性があるのか否か、これには慎重な検討が必須です。

経費の前倒しは税務調査で突っつかれる

経費の前倒しは、支出(支払い)をしただけでは、損金(経費)にならない可能性があります。

さらに、闇雲に経費の前倒しをしていると、税務調査で否認されかねないので、要注意です。

前倒し経費の例

  • 広告宣伝費

看板の作成、バナー広告の出稿であれば、経費の前倒しもアリ。

バナー広告 etc. 等質等量の広告であれば、一年分を前払いしておくことで、全額を当期の損金(経費)にできる(短期前払費用)。

一方、リスティング広告のデポジット(預け入れ)をした場合には、使わなければ経費にならない。

  • 交際費

時期を早めることで、結果として(交際の)回数が増えただけだった・・・と、なりかねません。

前倒しの効果は低いので、必要なタイミングで経費計上をおこなうのが良いと言えます。

経費の前倒しなんて、無理をしてまでやる必要はない!

前倒しの経費計上が、良い結果を生むとは言えません。

無理をしてまで、経費を前倒しする必要は、まったくありません。

そこで、前倒しをしても問題がないかどうか、じっくり検証してから、経費の前倒しの実行が必要です。

経費の前倒し計上は、翌期費用を先取りしているだけです。

翌期だったら何の問題もなく経費計上できたものを、無理をしてまで当期の経費として組み入れることで、そこに違和感や不自然さが生じてしまいます。

期末の経費計上は、税務調査でも必ずと言っていいほど、チェックされる項目です。

そりゃそうですよね?

(3月決算だったら)3月に突然経費の金額がドカンッと増えてたら、百戦錬磨の調査員じゃなくたって「あれ?」って思うでしょう。

不自然さを感じれば、必ず指摘を受ける、、、これは、当たり前のことです。

決算直前慌てて高額資産を購入するのが節税策としてダメな理由

節税対策で資産を購入する時の落とし穴とは?

基本的に、資産の購入や節税は、計画的におこなうもの・・・にもかかわらず、決算が近づいてきた途端、慌てて資産を購入するという行動にでる経営者がいます。

資産の購入という行動自体は、節税策の王道中の王道とも言える手段です。

節税対策で「中古のベンツを購入しよう!」というのも、ひと昔前に流行りましたね。

当然のごとく、資産の購入を薦める税理士もいます。

ただ、「資産の購入=節税」と言われるなかで、資産購入の大失敗というのも存在します。

資産購入で節税できないどころか資金を失うだけ

「資産の購入で節税をする」ための基本中の基本として忘れてならないのは、資産の購入時期が重要だということ。

資産を購入した事業年度に限り、事業に供した(その資産を事業に使った)期間分しか、経費(減価償却費)として計上することができません。

たとえば、3月決算の場合、3月から資産を事業に供したとすると、その1か月分しか減価償却費として経費計上できないということです。

注意すべき点は、資産を購入してから期末までの期間ではない!ということです。

あくまでも、資産を事業に使い始めてから、期末までの期間です。

(3月決算で)仮に、事業用の自動車を2月に購入したとしても、納車が4月以降であれば(当然、その自動車を事業に使い始めるのも4月以降になるので)、当期の経費として減価償却費を計上することはできません。

資産購入の最低条件とは?

節税にばかり意識を向けていると忘れてしまいがちですが、資産を購入して減価償却費を計上できるか否か、ということの前に、まず、その資産が本当に必要なのかどうか、ということを考えなければなりません。

資産を購入する決断のためには、その資産があれば、資産購入代金を超える売上を上げることができる、、、これが、最低条件です。

「自動車が業務に必須」というビジネスでなければ、本来クルマなんて買う必要はありません。

移動手段として、どうしても必要なのであれば、目的を果たせるもの

ならなんでもイイのです。

見栄で高級車を購入するなんて、愚かでしかありません。

資産購入額 > 節税額

資産を購入することによって節税できる金額が、資産の購入金額を超えることは、決してありません。

なので、購入する資産が、新たな売上を生み出さない限り、手元資金は確実に減少します。

節税ばかりに目を向けていると、この事実を見落とし、自分のビジネス・会社を窮地に追い込むことになりかねません。

節税はもともと(税金を支払うことによる)資金の流出を極力抑えるためにおこなうものです。

それが、節税に加えて見栄を張ることによって、より多くの資金を失うことを自ら進んでおこなうなんて、あまりにもバカげています。

減価償却費を計上する節税策がはまってしまう落とし穴とは?

減価償却費による節税策は、資金の流出がともなう!

減価償却費による節税策は、黒字であることが大前提です。

仮に、その事業年度で計上できる減価償却費以上の利益が出ていなければ、減価償却費の計上によって、赤字に陥ります。

※減価償却費の繰り延べについては、顧問税理士や税務署に確認してください。

節税によって赤字になってしまうなんて、なんだかおかしな話ですよね。

資産購入は手元資金を失う節税策である!

(ザックリ言うと)税金の金額は、「利益×税率」で算出されます。

そうである以上、「資産の取得額(購入金額)よりも、減価償却費の計上による節税額が大きくなることはない」ということを知っておかなければなりません。

節税のために資産を購入することによって、より大きな金額の支出(キャッシュ・アウト)が発生します。

ここで何が言いたいかというと、節税目的の資産購入をしない方が、手元資金は多く残るということです。

資産購入で節税しない方が、お金が残る!

仮に、「利益1000」「資産購入代金500」「税率30%」だとします。

  • 資産を購入しない場合

「利益1000」×「税率30%」=「納税額300」

  • 資産を購入する場合(減価償却費500とする)

「利益1000」-「減価償却費500」=「利益500」

「利益500」×「税率30%」=「納税額150」

 

節税できたのは、「納税額300」-「納税額150」=「節税額150」

「資産購入代金500」を支出したのに、節税できたのは「150」。

しかも、不必要な資産購入のために「500」を支出するよりも、資産を購入せずに「300」納税したほうが、「200」もお金が手元に残る。

自己金融効果の嘘・・・

減価償却費は、経費としての性格として「支出を伴わない経費」と呼ばれることがありますが、これは正確な表現ではありません。

なぜなら、資産購入時に支出(資金の流出)をしているからです。

  • 「(一つの)資産の減価償却累計額」≒「資産購入金額」

高額資産の購入において検討しなければならないことは、支出(=資産購入額+維持・管理費)以上のキャッシュ・インが見込めるのか否か、ということ。

支出以上のキャッシュ・インがなければ、無駄に資金を流出させただけなので、手元資金の不足という事態を招きかねません。

節税目的の保険加入が節税策としてダメな理由

節税のためにも「保険を!」と税理士に薦められたら・・・

法人が加入する保険は、返戻金(解約返戻金)をアテにしているものが多く、これは個人で加入する保険とは異なる特徴です。

  • 退職金の準備
  • いざというときのための備え

を(保険会社の営業トークでも)謳っている保険がそのほとんどで、これらの保険は、返戻金が高ければ高いほど「貯蓄性の高い保険」と言われています。

これは、保険料を支払うことで積み立てをしているといったイメージで保険をとらえているからです。

 

人気がある保険は、全額損金タイプの保険。

人気の理由は、、、

  • 支払った保険料の全額が損金として、経費計上ができる。

さらに、

  • 貯蓄性もある。

わかりやすい表現をするなら「お得」に感じる保険だから人気があるわけです。

節税を理由に保険に入るべきか?

全額損金タイプの返戻率は、大体50%~90%ほど。

返戻率50%~90%ということは、逆の見方をすると、支払った保険料の10%~50%は戻ってこないということです。

とすると、返戻金をアテにして(貯蓄性を重視して)保険へ加入するのは、考え方としてチョット無理があります。

※「支払った保険料の10%~50%は戻ってこない」 ⇒ この戻ってこない分は、単純に、保険会社の収入です。

 

全額損金タイプは、支払う保険料が割高である傾向が見られます。

なぜ、割高なのか?

それは、保障内容が手厚くなっているからです。

「手厚い保障が受けられるなら、割高でも仕方がない」のかもしれませんが、実際問題そこまで手厚い保障が必要なのかどうか、これはちゃんと考える必要があります。

さらに、保険を解約するまでは、決められた保険料を毎年毎年支払い続けなければならないわけですから、今だけではなく、将来のお金のことも加味して、保険を考えなければなりません。

お金を失うだけの保険加入

通常、保険料を支払い続ける期間の後半に、解約返戻金のピークはきます。

「資金的に苦しくなったら、解約すればイイ」と考える経営者もいますが、大抵の場合、早い時期で解約すれば、あなたは大損をこうむり、保険会社が儲かることになります。

これらのことから、全額損金タイプの保険は、(実は)貯蓄性が低い保険で、ただ単に高額の保険料を支払っているだけ・・・になる可能性が非常に高いのです。

 

全額損金タイプではない、

  • 1/2損金タイプ
  • 1/3損金タイプ etc.

これらの保険のなかには、返戻率が100%に近い保険もあります。

こういった保険は「全額損金タイプ以上に貯蓄性が高い」ので、その返戻金を目当てに保険の加入を検討する経営者がいるのも当然です。

逓増定期保険の注意点

このタイプの代表的な保険は「逓増定期保険(ていぞうていきほけん)」です。

逓増定期保険の特徴は「ピーク時の返戻率が高い」ことです。

ただし、ピーク時の返戻率の高さと引き換えに、ピーク時以外の返戻率はかなり低く抑えられています。

※ピーク時を過ぎると返戻率が徐々に下がっていき、保険期間満了時には解約返戻金が0になります。

よって、保険加入から短期間で解約してしまうと、これも大損する保険です。

 

もし、逓増定期保険に加入するなら、入念に資金計画を立てる必要があります。

キャッシュフローの悪化により、どうしても保険を解約せざるをえない状況になったとしたら、それは、保険会社だけが儲かり、あなたが損を負担することを意味しているわけですから、十分な資金繰りが見込める状況でなければ、逓増定期保険への加入はキケンなのです。

保険で退職金を準備することは正しいのか?

節税目的の保険は、支払保険料相当額が損金になることに着目した、合法的に「利益の繰延べ(利益の先送り)」ができる商品です。

ただ、あくまでも「利益の繰延べ」をする商品なので、解約時には相当な利益(=解約返戻金)が出てしまいます。

そこで、解約返戻金を役員等の退職金に充てるのが、一般的な考え方です。

これは「役員や従業員の退職金の準備に!」という保険会社の営業トークや税理士のアドバイスが大きな要因です。

「退職金の準備」と言われると、たしかにそれは正しいことのように聞こえます。

でも、本当にそうでしょうか?

保険料を支払って退職金を準備する・・・この場合、いくらの資金流出(保険料の支払い)と引き換えに、いくら節税できるのか。

そして、手元にどの程度の資金が残るのか、シミュレーションが必須です。

実際、わずかな金額の節税のために、相当額の資金を失っているケースが多くあります。

そして、節税のために保険に加入することなどせずに、素直に納税をしている方が「手元資金は多く残る」なんてことが、ざらにあるのです。

あなたの保険加入の目的は?

手元資金を削って心もとない状況にしてまで、保険に加入することに意味があるのか、、、税理士や保険会社から話がもち込まれたら、なぜ、保険に入るのか、是非考えてください。

保険へ入る目的が「節税」だとしたら、それは、資金不足に悩まされる経営に、一直線に進んでいく第一歩かもしれません。

税理士任せの節税策がダメな理由

脱税は、絶対にやってはイケナイ行為です。

手を染めてはいけません。わかりきっているとは思いますが、念のため。

税理士が言うことは、絶対的に正しいのか?

脱税という違法行為に手を染めるのは、大体以下の2パターンです。

  1. (とにかく税金を払いたくない!)社長自ら進んでおこなう。
  2. (税理士に丸投げしている・・・)知らないうちに税理士が勝手にやっている。

税金が嫌なのか、それとも、お金を支払う(お金が減る)ことが嫌なのか。

理由は人それぞれですが、「1.」は論外。

問題は「2.」です。

 

社長であるあなたの知らないところで「脱税していた」なんてことが、現実に起こります(起こる可能性があります)。

ニュースでもありますよね、こういう話って。

そして、こういたケースでよく聞く社長の言い訳は「税理士に任せっきりだった・・・」というものなんですが、「税理士に任せてあるんだから、税理士の責任」と考える社長もいます。

(税理士主導の脱税なんて)もちろん、税理士が悪いんですよ。

でも、自分(=あなた)の会社、自分のビジネスですよね。

なのに、「自分の会社で何がおこなわれていたか知りません」は、あまりにも無責任です。

これだって、経営者として論外、話になりません。

ダメな節税策『脱税行為・脱税に類する行為』

脱税は「偽りその他不正な行為によって、税金(納税)を免れること」です。

税務調査時にその申告内容について、事実を仮装・隠ぺいした場合には、重加算税が課されます。

  • 事実の仮装・・・偽ること
  • 事実の隠ぺい・・・故意に隠すこと

脱税に関するニュースは毎年のように世間に流れます。

もちろん、それだけが全てではなく、ニュースにならない脱税もあります。

もし、ニュースになれば、会社名や個人名が世の中に発信され、SNSの時代ではその広がりも計り知れませんし、当然、大きなダメージになることは避けられません。

 

脱税という行為は、金銭面だけではなく精神衛生上も、割にあわない行為です。

「バレなければ・・・」と考える人もなかにはいますが、バレなければ良いという話ではありません。

というか、そもそも「バレなければ良い」という考え方そのものが、ダメなんです。

ダメな節税策『売上の過少計上』

「当期の売上を来期に回す・・・」

「少額の売上代金を懐に入れる・・・」

売上をごまかす(売上を少なく計上する)ことも「偽りその他不正な行為」なので、脱税です。※重加算税の対象

商品であるモノが動く場合には、商品の動き(流れ)をチェックされれば、売上のごまかしは簡単にバレてしまいます。

また、モノが動かない(サービスやヒトの)場合には、相手方からの支払いの事実を把握されれば、ごまかしていることなどすぐに発覚してしまいます。

結果、売上を意図的に少なく計上したことによって、ごまかさなければ支払う必要のなかった税金まで支払う羽目になるのです。

ダメな節税策『架空経費の計上』

売上の過少計上と同様に、架空経費の計上も「偽りその他不正な行為」なので、架空経費の計上も重加算税の対象となる行為です。

架空経費の計上にはどのようなものがあるかと言うと・・・

  • 架空人件費の計上
  • 外注費の架空計上
  • 領収書の改ざん  etc.

架空経費の計上も売上の過少計上も、しつこいですが、税務署にバレなければ「OK」という話ではありませんよ。

バレないよう工作するために労力を割くぐらいなら、それをもっと別のことに使った方断然意味があります。

ダメな節税策『家族への不相応な給与支払い』

社長の給与(役員報酬)を引き上げて、会社としての納税負担を減らす・・・でも、社長個人の税負担(所得税や住民税)が増える・・・

この時にやってしまうのが、(税率を低く抑えることができる)家族を、従業員として雇用しているように偽り、その家族に給与を支払うという行為です。

もちろん、家族だから給与を支払ってはいけないということはありません。

他の従業員と同程度や一般的に妥当な待遇であれば、問題ありませんが、仕事をしていないのに給与が発生していたり、仕事内容に見合わないほど高額な給与であれば、問題です。

これは明らかな不正・・・つまり、これも脱税と言える行為です。

“税理士へ丸投げ”の弊害

経理や会計の仕事を税理士に丸投げすれば、事務作業の負担が減り、社長の仕事がラクになるかもしれません。

ラクになるのは、領収書やレシートなどの書類の整理と会計ソフトへの入力作業です。

でもその一方で、必要な資料を税理士に渡してから税理士が決算書を作成するまでの間がブラックボックスになってしまいます。

そして、大抵の場合、税理士に丸投げする社長は、税理士が作成した決算書に対して、何の疑問も持ちません。

黒字か赤字か。納税額はいくらか。

気にするのは、それぐらいです。

なぜなら、決算書を見ても分からない!説明されてもイマイチ意味が分からない!から。

大半の税理士は不正などせず、ちゃんと彼らの仕事をしてくれます。

でも、(ごく)一部の税理士は・・・。

 

顧問税理士が、ちゃんと税理士としての仕事をやってくれているのか?

それが分かるのは、税務調査が入ってからです。

それまでは「ちゃんとやってくれているはず・・・」という、想像でしかありません。

税務調査が入って後、大きな負担となる納税がドカンッと来て、税理士に丸投げしていたことを後悔しても、それでは遅いのです。

これは、社長が「数字が分からない」ことをほったらかしにしていることが原因ですから、何をすれば良いかは明白です。

実質返戻率の罠

単純返戻率と実質返戻率

  • 単純返戻率・・・支払った保険料が単純にいくら戻ってくるか、を示す指標
  • 実質返戻率・・・下がる法人税を考慮したうえでいくら戻ってくるか、を示す指標

保険会社のセールストークは、、、
「単純返戻率では、70%。でも、税効果を考えた実質返戻率は、100%。」

こう展開される保険会社のセールストークが言いたいのは「支払った保険料は全額戻ります。」ということ。

この説明をされると多くの経営者は納得をし、「損をしない」なら保険に加入しようとしてしまうのですが、実はこのセールストークには裏があります。

実質返戻率のウラにある真実

「単純返戻率では、70%。でも、税効果を考えた実質返戻率は、100%。」

この保険会社の説明は、解約返戻金が戻ってきたときにかかる法人税が加味されていません。

つまり、解約したときに(たまたま)損失(赤字)がでていて法人税がかからない、ということが前提になっているのです。

なので、保険の返戻率については、実質返戻率ではなく、常に単純返戻率で検討しなければなりません。

そうしないと、「支払保険料」+「解約返戻金にかかる税金」の二重苦になってしまいます。

では、ここで例を挙げて、実質返戻率と単純返戻率の検討をしてみましょう。

  • 法人税率は30%で計算
  • 保険料総額1000万円(→損金算入1000万円)
  • 実質保険料=1000万円ー(1000万円×30%)=700万円
    ※(1000万円×30%)が、保険会社トークの「税効果」という部分に該当する。

【例1】解約返戻金が700万円の場合、、、

  • 単純返戻率・・・700万円÷1000万円=0.7(=70%)
  • 実質返戻率・・・700万円÷700万円=1.0(=100%)
    ※税効果を考えると「損をしない!」と言っている。

【例2】解約返戻金が1000万円の場合、、、

  • 単純返戻率・・・1000万円÷1000万円=1.0(=100%)
  • 実質返戻率・・・1000万円÷700万円=1.428(≒143%)
    ※これなら「儲かる!」という話。

【例1】【例2】は、保険会社のセールストークを前提にした計算です。

では、ここからは【例1】【例2】の実質返戻率に「解約返戻金にかかる税金」を考慮し、計算します。すると、、、

【例1】解約返戻金が700万円の場合、、、

(700万円ー700万円×30%)÷700万円=0.7(=70%)

【例2】解約返戻金が1000万円の場合、、、

(1000万円ー1000万円×30%)÷700万円=1.0(=100%)

上記の計算を見てもらうとわかる通り、「解約返戻金にかかる税金」を考慮し計算すると、その結果は、単純返戻率と同じになるのです。

単純返戻率=実質返戻率

つまり、結論は『単純返戻率=実質返戻率』ということです。

なので、セールストークに惑わされて「損をしないんだ」「得するのかも」なんて考えてはダメです。

最後にもう一度言っておきますが、単純返戻率で検討しないと、「支払保険料」+「解約返戻金にかかる税金」の二重苦を背負うことになるので要注意です。

 

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